ストレス社会で引き起こされるうつ病は早めの治療が肝心

心の病気を隠す身体症状

看護師

身体症状という名の仮面

慢性的な頭痛を訴えて内科や脳神経外科の病院を受診し、脳の検査を受けても異常なしと診断されることはよくあります。それだけ頭痛が脳の病気以外でも多く発生している証拠ですが、通常は頭痛薬を処方されるだけで終わるものです。頭痛薬が効かなくなってから病院を再診した場合に、初めて心療内科を紹介されるケースも少なくありません。頭痛に限らず、こうした身体症状の背後には心の病気が潜んでいるものです。頭痛や肩凝りは代表的な例ですが、他にもめまいや耳鳴り・目のかすみ・胃腸の不調など多くの症例が見られます。不眠や吐き気・倦怠感といった症状が現れる人もいます。このような不定愁訴も、一般内科では自律神経失調症と診断される例が多いものです。心療内科では検査よりも問診を重視し、身体症状の背後に潜む心の病気を見つけ出しています。身体表現性障害や不安障害と診断される患者さんも少なくない中で、うつ病が隠されているケースも珍しくありません。うつ病と言えば普通は気分の落ち込みなど心の症状を想像しがちですが、意外に身体症状を訴える人も多いものなのです。うつ病がさまざまな身体疾患に偽装することもあるため、心療内科の医師は表面的な症状に欺かれないよう慎重に診断しています。身体症状を隠れ蓑にしたうつ病は、仮面うつ病とも呼ばれています。心療内科の医師はこれを見破る目を持っているため、頭痛その他の症状まで鮮やかに解決させているのです。

抗うつ薬の意外な効果

心療内科でも普通の病院と同じように、うつ病の治療では薬を使っています。数多くの種類がある抗うつ薬はうつ病治療の基本です。中でもSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬が登場して以来、うつ病の治療成績は大きく向上したと言われています。SSRIはうつ病の他にも不安障害や強迫性障害など、多くの精神疾患治療に使われています。SSRI以外の薬も含め、脳内の神経伝達環境を整える抗うつ薬は応用範囲が広いのです。抗うつ薬が頭痛の改善に役立ったり、めまいや耳鳴りといった症状を解消させたりしているのも意外な効果の例と言えます。仮面うつ病に伴う身体症状であれば、神経伝達物質の働きを正常化させることで改善が期待されるのです。中には抗うつ薬で腰痛が治ったという人までいます。仮面うつ病の症状は上半身に限られると思いがちですが、以前から腰に不安を抱えていたような人はその限りではありません。うつ病が身体疾患に偽装しようとする場合、その人の持つ弱点の部分に症状が現れやすいとも言われています。持病への不安がうつ病によって増幅され、痛みや感覚異常といった形に変換されてしまうのです。心の不調に加えて体の症状まで抱えてしまった患者さんの苦痛を、心療内科では薬や心理療法を使って取り除いています。全国の病院ではうつ病患者が増加していますが、それも仮面うつ病の発見率が向上している証拠とも言えるのです。